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佐枝節炸裂! 

 噂の「サイっち本」 

このコーナーでは、佐枝せつこがジャンルにとらわれず、人生に再スイッチが入りそうな本をご紹介していきます。
                   

「ゲーテの警告」日本を滅ぼす「B層」の正体   
適菜 収 著/講談社+α新書 

今年は昼間のワイドショーがやけに面白い。聴覚障害の作曲家と彼のゴーストライター。STAP細胞論文を発表した若き女性科学者とその上司。女性蔑視のヤジを浴びた女性都議と飛ばした男性都議。奇怪な号泣会見をした県議。

これほどキャラの濃い逸材が次々と登場する年など滅多にない。いや、私が生まれてから初めてかも。

 

テレビ業界は逸材たちの記者会見を生中継で茶の間に流してくれた。全ての記者会見を見ることができた私はなんとラッキーだったことか。そして情報通となった私は、会う人ごとにテレビで得た知識を振りかざし、「えっ、そんなことも知らないの!」と得意満面の笑みを浮かべたのだ。

 

ところが本書を読んで慌てた。

今、日本を動かしているのはB層だという。B層とは人間の質のことで、マスコミ報道に流されやすい「比較的IQの低い人たち」のこと。自分の頭で考えずに、興味のある文化人、タレント、知識人の発言をそのまま自分の意見として流用する人たちのことをいうのだという。

 

時間を遡ると小泉元総理の支持者はB層。マニフェスト民主党を選挙で圧勝させたのもB層。政治家にもB層がいるとも記載されているが、そういえば、誰もが思い当たるのが東日本大震災のときの元総理大臣の行動だ。

著者はゲーテの言葉でこう表現する。

 

「活動的な馬鹿より恐ろしいものはない」

 

今、優れたものを認めない野蛮な時代に私たちは暮らしている。

誰しも自分に理解できることしか耳に入れない。

喫茶店での話題から得た結論が現実の政治を動かし、「お茶の間の正義」「女子供の正義」が社会のあり方を決定していく。

極彩色の駄菓子が尊重され、ジャリタレが「神」になる。

 

握手会をするアイドル達を支持する人たち、ベストセラー本しか読まない読書好きを自認する大人たち。若作りが生きがいの中高年女性。二十歳をすぎても幼稚な大人や子供っぽい老人が巷に溢れている。

 

教養は知識では伝わらないとゲーテは言う。世の中には立派な経歴と豊富な知識をもつバカがいる。

あなたはB層ですか?

不安に駆られたあなたはぜひ本書をお読み頂きたい。

                        

(佐枝せつこ)

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