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Sairuma!
企画*配信 佐枝せつこ/川野ヒロミ
輝いているあの人に聞く目からウロコのストーリー
佐枝せつこの「ゲストルーム」
大人男子がゴジラに惹かれる理由
第11回のゲスト
株式会社グリーンフレンズ 取締役社長
伊藤芳康さん

2016年(平成28年)7月29日に公開された日本映画「シン・ゴジラ」は、災害時における日本が抱える問題を浮き彫りにしたこともあり、従来のゴジラファンではない人たちも劇場に押しかけた。私もその一人だ。東京の街がゴジラに破壊されていく映像はとにかくリアル。子供の頃に見たゴジラ映画の記憶も蘇り、ゴジラについてもっと知りたくなった。幸運なことに自宅にゴジラの部屋があるほどゴジラ好きの大人男子、伊藤芳康さんとお知り合いになった。大人男子がゴジラに惹かれる理由をお聞きした。
ゴジラとの出会い
「1963年、11歳の時です。当時、父の仕事の関係でアメリカ・カリフォルニア州・サンフランシスコ市に滞在していまして、父に連れられ、弟二人と四人で映画『King Kong vs. Godzilla』を鑑賞したのがゴジラとの初めての遭遇です。
同映画はゴジラ映画としては初めてのカラー製作で上映され、伊福部昭のゴジラのテーマ曲もとても好きになりました。この映画がゴジラ好きの原点となります」
ちなみに『King Kong vs. Godzilla』は日本映画でゴジラシリーズの第3作で日本での観客動員数は1255万人。「怪獣同士の対決」という日本の怪獣映画の流れを決定付けた作品であり、初回興行時の観客動員数は1120万人を記録。ゴジラシリーズ中では歴代最高で、大ヒットといわれる「シン・ゴジラ」さえ遥かにおよばない。
ゴジラから離れる
日本に帰国してからもゴジラ映画を鑑賞してきた伊藤さんだったが、ゴジラへの興味が半減していく。
「キングギドラが登場するくらいまでのゴジラ映画はまだ良かったのですが、その後の正義の味方、人類の味方という位置づけに徐々に飽きてきてしまったんです」
漫画チックに描かれる正義の味方「ゴジラ」より敵対する個性的な怪獣の数々に魅了されるようになったという。
「当時は、アメリカで流行をしていたユニバーサルスタジオの怪物、いわゆるフランケンシュタインの怪物、ドラキュラ、狼男、ミイラ男、半漁人などに夢中になって、プラモデルを作成したり、怪獣カードを収集したりしました」
これらのカード・コレクションは、今やとても貴重な「お宝」ではないかと自負しているとのこと。

再びゴジラへ
「ゴジラが正義の味方であるという印象を一変させたのが1984年に公開された『ゴジラ』でした。1954年に現れたゴジラが再び現れたという設定で、それ以前の正義の味方というイメージをすべて葬り去りました」
『メカゴジラの逆襲』以来9年ぶりに製作されたシリーズ第16作『ゴジラ』は、ゴジラ以外の怪獣は登場せず、再びゴジラは恐怖の対象として描かれている。
「政治的な映画の仕上がりに興味が再び復活しました。特にゴジラの造形が大きく大幅に進歩し、とてもカッコよくなってきました。まさにゴジラ映画の原点回帰の筋書きです」
日本近海を航行していたソ連(当時)の原子力潜水艦が撃沈され、ソ連政府はアメリカが戦争を仕掛けてきたと憤る。アメリカは関与を全面否定したが、ソ連はアメリカの攻撃と断定し、両国軍は臨戦態勢に突入。緊迫した場面で、自衛隊のP-3C哨戒機が捉えていたソ連原潜撃沈の海面写真を分析した結果、撃沈はゴジラの襲撃であることが判明。
撃沈の原因はゴジラであるという事実の発表後、アメリカとソ連は日本政府に対し、ゴジラへの核兵器攻撃の容認を強く要請。特にソ連は原潜撃沈の報復を主張し、アメリカもソ連に同調する。
しかし、首相は非核三原則の立場から拒否し、首相の尽力で米ソによる対ゴジラ戦術核攻撃の危機は回避される。その代わりという事で、政府は対ゴジラ新兵器を発表。それは、核物質の活動を抑えるカドミウム弾搭載のスーパーXという航空機だった。そして、スーパーXを出動させ、ゴジラを昏倒させることに成功する。
伊藤さんに映画の筋書きを語っていただいたが、まさに『シン・ゴジラ』の原点のような映画だ。

ゴジラ映画の魅力
「ゴジラは破壊王であり人類の造り上げた文明を破壊し尽くします。そして人類には破壊を止められないのです。大都市破壊場面の特撮映像、最近ではCGを駆使した映像は見事です。さらに、最新兵器満載の自衛隊が登場する事も大きな魅力であり、ゴジラ映画はとても政治的で、現実的であると感じています」
ゴジラの魅力
「とにかく造形がとてもカッコいい事です。『ゴジラvsデストロイヤー』では内蔵の、核エネルギーの暴走により身体の所々が赤く光り輝き、蒸気を噴き出すという有名な真っ赤に燃え盛る『バーニングゴジラ』と化しました。さらに『ゴジラ2000ミレニアム』からは、背びれが大きく鋭く強調され、斬新なデザインに一新され、さらにカッコよくなっていきました」
ゴジラのフィギュアを集めていらっしゃるとのことですが、いつ頃からですか?
「札幌に単身赴任をしていた頃からです。たまたまゴジラのフィギュアを見つけたのがきっかけで集め始め、その後も京都へと赴任先が変わり、単身赴任生活の中でどんどん数が増えてきました」
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コジラの部屋
「ゴジラは映画ごとに新しい造形が誕生しますので、ほとんどの造形を持っています。ゴジラに出てくる怪獣たち、キングコング・モスラ・バトラ(=バトルモスラ)・キングギドラ・スペースゴジラ・ビオランテ・デストロイヤーなども揃っています」
「その他にウルトラQに登場するゴメス・ペギラ・カネゴンなどや、ウルトラマンに登場するレッドキング・ピグモン・バルタン星人などのフィギュア」
「また、大好きなユニバーサルスタジオモンスターたち、アメリカンヒーロー超人たちのスーパーマン・バットマン・スパイダーマン・ターミネーター・R2D2、そしてアベンジャーズのヒーローたちのハルク・アントマンなどもあります。ジャンルが全く異なりますが、Betty Boopを6体ほど机の片隅にディスプレイしています」
「そして、カッコいい超合金製のロボットとして、鉄人28号・ブラックオックス・マジンガーZ・ウルトラマン・ウルトラセブン・エヴァンゲリオン零号機+初号機+弐号機+3号機+4号機+5号機までの計6機、超合金製宇宙戦艦ヤマトなど多数あります」
ゴジラの部屋で伊藤さんがすること
「電気照明を消して、キャンドルライトのみ数本点火して、インセンスを焚き、BGMにEnigmaやNorah Jonesを流します。ゴジラたちに囲まれてこの部屋にいると一日の戦いの疲れを忘れます。若干異常かもしれませんが、ヒーリング効果抜群なのです。休日は朝からこの部屋にいますし、食事の時に部屋から出て、また部屋に戻るという生活です。この部屋では仕事もしています。好きなものに囲まれているからなのか、とてもはかどります」
奥様の反応
「あきれています。部屋には入ってきませんね(笑)」
大人男子の魅力の秘密
「ゴジラ男子」と呼びたくなるほど、ゴジラを語るときの伊藤さんの瞳はきらきらしている。しかし、伊藤さんの興味の対象はゴジラだけではない。
「日本の歴史にも興味があり、以前は大化の改新前後の蘇我氏と物部氏はどこへ消えてしまったのか?とか、聖徳太子の正体は?とか調べていました。最近は幕末は薩長の築いた歴史であるとの視点から、反薩長の立場で歴史を観たらどうなるのか?明治維新を成し遂げた薩長土肥を支えた財政的背景は何か?などを調べています」
音楽も大好きで、ジャンルは幅広くその時の気分や天候で色々なものを聞いているとのこと。何にでも興味を注いでしまう好奇心旺盛な性格はまるで少年のようだ。
ずばり、大人男子の魅力の秘密は、好奇心旺盛な性格にある。伊藤さん、これからも益々いろんなものに興味を注いで輝いていてください!

■伊藤芳康 プロフィール
慶應義塾大学経済学部卒業
デンバー大学経営大学院修士課程修了
三菱UFJ信託銀行執行役員、(株)間組取締役専務執行役員、菱永鑑定調査(株)代表取締役社長、三菱UFJトラスト保証(株)代表取締役会長を経て現在(株)グリーンフレンズ代表取締役社長
